完璧な学生である新藤の変化

 エレベーターに乗ったのは、成績優秀、スポーツ万能のみんなのリーダー新藤のぼるだった。新藤には癖があった。しきりに、トイレに行き、髪の毛を整える習慣だ。休み時間になるとすぐにトイレに行って、頭を手入れする。なにやら、香水のようなものをいつも持ってきていて、頭に霧吹きする。

 Aは新道を注意深く観察していた。そして、新藤の万能の秘密は、あの香水にあるんじゃないかと思った。あれを頭に吹きかければ、自分もクラスみんなに尊敬されるイケイケ高校生になれると確信した。だから、Aは新道の鞄からそれを盗った。

 そのときから、新道の様子が少し変わった。2年間付き合っていた彼女と別れたらしい。新道は元気をなくしていた。それに、妙な噂も立ち始めた。女の子たちが新道から変なにおいがするとささやき始めたのだった。この噂は瞬く間に行内に広がって、新道を悪く言うものも出てきた。

 新道に対する尊敬はそれでも落ちることはなかった。なぜなら、彼は優秀で、気さくで話が面白いからだ。特に、新道が北海道に行ったときの話は面白かった。なんでも、ある農家のところに肥料の研究に行った時の話らしい。彼は、その農家に泊まることになって、底のお嬢さんと恋をした。とかいう話だった。

 とはいっても、やはり前とは違った。新道と話すものは、常に違和感を感じていた。なにかが匂うのだった。なにか、臭いにおいを感じてしまうのだった。